熱帯雨林の多様性は、広大な面積に均一に広がるのではなく、足元の「ミクロな高低差」に凝縮されています。なかでも巨木を支える板根(バットレス)は、単なる支持構造を超え、流体と有機物を制御する「ダム」として機能しています。樹幹を伝う雨水(樹幹流)や、板根が落葉を堰き止めて作る土壌、そこには周囲とは環境パラメーターの異なる特殊なポイントが出現します。
一方で、林床を覆う落葉帯(リター層)は、高速な分解が進む薄く激しい環境です。無数の隙間に潜む節足動物や分解者、それらを含んだミクロの動的な環境がそこには存在します。ここでは、板根がつくる構造的安定と、変化し続けるリター層の二つに注目してみます。
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雨林内の複雑な林床構造を完全に再現するのは容易ではありませんが、こうした微環境のルールを理解し、レイアウトに落とし込むことができれば、より深く、よりマニアックなパルダリウムの世界を構築できるのではなかろうか。
熱帯雨林のバットレスと林床落葉帯の微環境
バットレス(板根)
林床落葉帯
サンフレック帯・低木の陰に寄る点在分布
緩やかな起伏のある林床、風通しが良く水源も近いこの地点。樹冠が薄く、サンフレックが地面まで強めに入り込む明るいパッチ。しかし良く観察するとこの種は直射が強すぎる地点を避け、低木周りの光が一段落ちるエッジに寄るように点在していました。前項の(極端を避ける戦略)をさらに一歩進めた、既存の構造を利用した「選択的な遮光戦略」を感じます。リター層の微高所は過湿を避け、低木の陰は過光を緩和し、両者が重なる場所がこの種にとっての微生息域となっている。似たよう落葉帯でも、微小な環境勾配が、生息地点を数十センチ単位で決めています。

