目次
容器内栽培いろいろな方法
容器内栽培とは、何らかの容器内で植物を栽培する方法で、空間湿度を保てるよう外気と遮断された環境をつくり、
小型の植物の増殖や養生または多湿環境に自生する熱帯植物の育成に適した栽培方法です。
このサイトでは主に、
東南アジアの熱帯雨林特に雲霧林で採取された小型の陰性植物を熱帯植物として紹介しています。
熱帯雨林のジャングルは終日湿度の高い多湿環境や、
水気の多い湿潤な土壌であり、多くの地域は通年温暖な熱帯気候です。
そこに分布する植物のほとんどは日本の環境では通常育成することが難しく、
育成環境を管理しやすい容器内栽培が一般的です。
ここでは容器の大小に関わらず、
色々な容器内栽培の方法を紹介します。
1.ガラス瓶
ガラス瓶を使った容器内栽培では、一種入魂でその植物を観察しやすく、瓶の中の環境も個々にセッティングできます。
小さなガラス瓶のデザインは蓋さえあればどんな物でも良いので、
好きなデザインの物を探してみてください。
ガラス瓶を使った容器内栽培のメリットは、
・単独育成になるので、病気や溶けが発生した場合でも他へ伝染しない。
・水槽と違い小さなガラス瓶なら置き場所の移動もしやすい。
・見た目が可愛い。
・何より値段が安い。
デメリットは、
・植物が大きくなって狭くなると草体の形が悪くなる。
・少しの温度変化で曇りやすい。
・中のセッティング次第では根腐れを起こしやすい。
・育成できる種類が限られる。
ガラス瓶を使った容器内栽培のセッティング方法
【写真1-1】
写真1-1の容器内栽培はガラス瓶の中で用土植えにしているものです。
この用土は硬い粘土質の土壌を再現する為に3種類の材料を配合して作りました。
植物は硬い土壌の方が成長速度がゆっくりになる傾向があるので、
ガラス瓶内で出来るだけ長く小さい状態を維持できるようにしています。
粘土質の用土で使用する材料は、
ケト土、荒木田土、バーミキュライトの3種類です。
配合比は(ケト土:荒木田土):バーミキュライト=(1:1):1の割合です。
ここに(サンソが一番)を少し混ぜます。
多分これを入れないと根腐れして枯れてしまいます。
小さな瓶の中で全体を粘土質にしてしまうと根腐れを起こしやすくなってしまうので、
底面には富士砂細粒を敷いて細かい空間が多くなる層を作ります。
その上に作った用土を入れて軽く押し固めて土壌は完成です。
用土が粘土質なら移動などの振動でも動かないので、
瓶の内側も汚れにくく、レイアウトも壊れません。
【写真1-2】
写真1-2はガラス瓶を使ったコケリウムです。
これもシダや苔を容器内栽培にしてそのまま丸ごとレイアウトにしているものです。
作り方や使用する植物の種類によっては小さいガラス瓶で非常に簡単に管理でき、
長時間美しい状態を維持できます。
土台になる用土は写真1で使っているものを配合比を変えて作ります。
使用する材料は、ケト土:荒木田土=1:1です。
これらを混ぜ合わせると完全に泥粘土になります。
この粘土を使ってガラス瓶の中に土台の形をつくっていきます。
まず土台が完成したら苔やシダを細かく張り付けていく作業です。
小型のツタ植物なども使用できるので、自由に精密なレイアウトを作ることができます。
【写真1-3】
写真1-3の容器内栽培はガラス瓶の中で水苔植えにしているものです。
この方法は主に養生や増殖をするために使っています。
高湿度を安定して維持したい時はこの方法をしています。
使用する材料は水苔とサンソが一番です。
瓶底にサンソが一番を3~5粒ほど入れて水苔をかぶせます。
これでセット完了です。
ガラス瓶内の水分量は、
入れる植物の状態や目的によって調整します。
折れたり切り戻したりした根の無い株は水分量を多めにして密封度の高い容器で管理し、
発根が確認できれば、鉢植えにして広い育成スペースへ移動させていきます。
ベゴニアの葉挿しをする場合は、水苔の水分量を少な目にしたり調整します。
2.小型水槽
ここでは幅15cmから45cmの熱帯魚用水槽で熱帯植物を容器内栽培をする方法を紹介します。大きい水槽ほど同じ空間内に環境差が出やすく、
ある場所と別の場所では湿温度に大きな違いが生じることがあります。
慣れていないとこの違いは見た目に分かりにくいですが、
小型水槽の空間サイズなら環境差も小さくなり、水槽全体で同じ環境を作りやすいです。
小型水槽を使った容器内栽培のメリットは、
・全体の環境を合わせやすい。
・変化を観察しやすい。
・水槽内で植物の配置変えがしやすい。
・複数の水槽を使うことで環境設定を変更できる。
デメリットは、
・ガラス蓋が熱帯魚用なので隙間が多く、工夫が必要。
・成長の早い植物はすぐに手狭になる。
・密封度によっては曇りやすい。
・植物同士が接触してどちらかが負けることがある。
小型水槽を使った容器内栽培のセッティング方法
【写真2-1】
写真2-1は30cmキューブ水槽(左)と30cm×45cm水槽(右)で多湿環境を作っています。
30キューブ水槽の底いはビーナスライトという発泡ガラス製の軽石のような素材を敷いています。
この材料は水の吸収が良く多孔質で面積が広いので湿度を上げる効果と水を吸い上げる効果があり、
底のに水を少し貯めておくことで、水やりの頻度を少なくできます。
ただ、粒が大きいので小さい鉢を並べると不安定で見た目があまり良くないように感じます。
雑菌やカビが発生した場合はすぐに全体へ回って更に見た目が悪化するなどの短所もあるので、
最近はあまり使用していません。
右の45cm水槽は何も敷かずに水苔植えにした鉢を沢山並べています。
密封した容器内で沢山の鉢を並べると湿度は勝手に高まりますので、
一気に水槽内がいっぱいになる量の植物がある場合は一番シンプルな方法です。
この時底に水が溜まり過ぎると根腐れの原因になるので、水やりの時は量を確認しながら行います。
ホームセンターなどで売っている猫除けマットで底上げすると管理しやすくなります。
この水槽では湿度100%を保ちたいので、密封して結果的に水やりの頻度が少なくて良いですが、
湿度の調整をしたい場合は蓋を密封せずに少し隙間を作って猫除けマットで底上げする方が管理は楽かもしれません。
水槽の蓋はサランラップで簡単に済ませていますが、
見た目が気になる場合は、ガラス板を寸法切りして乗せておくと見栄えもよいです。
ガラス板は熱帯魚屋さんなどで有料で切ってくれることがあるので自分で出来ない場合はやってもらいます。
【写真2-2】
この水槽は手前2つが30キューブ水槽、奥が20cm×30cmの水槽で容器内栽培をしています。
小型水槽の場合一か所に並べてそれぞれ違う環境を作ることが出来るので、
容器内栽培をする種類や株の状態によって別々に設定しています。
写真2-2の3つの水槽は左側を暗くして右へ行くほど明るくなる環境です。
水槽内の湿度も蓋の密封具合で個々に変更できます。
【写真2-3】
写真2-3は45cm×30cmの水槽で高さが40cmあります。
この水槽では水苔を底面全体に敷いて、
その上に水苔植えの鉢を並べる方法の容器内栽培です。
湿度管理が楽で手間も少ない方法なので、うちの水槽はほぼこのやり方にしています。
背の高い水槽では上の方と下の方では湿度の違いが大きくなったり、
空間が広い容器内で鉢植えのみの場合は多湿状態を維持しにくかったりします。
そこで、水の面積が多くなるこの方法でセットすることで、
湿度の調整は蓋の隙間だけで上下させることができるようになります。
慣れていない方でも簡単に環境を作ることが出来るのでオススメの方法の一つです。
【写真2-4】
写真2-4は小さい水槽でコケリウムを作ったものです。
使用している苔が細かい種類なので、容器が大きくなるほど、
ミニチュア感が良く表現できるので、時間をかけるとこった作品を作ることができます。
3.ハ虫類用ケージ
ハ虫類用ケージで植物の栽培管理は色々な面でとても楽です。水槽前面が開放できるものが多く、使い勝手も見た目も良くて、
パリダリウムのレイアウトや植物コレクションを綺麗に並べることが出来ます。
ガラス扉はピタッと閉まりますが、
動物用に設計されているものが多く密封度は低いので養生が必要な状態の株や発根が未熟な株をそのまま入れるには空気穴を塞ぐなど工夫が必要です。
ハ虫類用ケージでの容器内栽培のメリット
・見た目が圧倒的に綺麗。
・適度な空気穴があるので曇りにくい。
・前面扉で手入れが簡単。
デメリットは、
・値段が高い。
・湿度が逃げやすい
ハ虫類用ケージを使った容器内栽培のセッティング方法
【写真3-1】
写真のケージはサイズが小さく鉢を沢山並べることが出来ないので、
湿度維持の為に水苔を敷いています。
大きなケージなら植物を沢山収容できるので湿度も出やすいかと思います。
水抜き穴があるケージ内では水通しが出来るので植物の育成にも良く、
ケージ内も清潔に保てるなどメリットが大きいです。
熱帯植物の栽培を楽しんでいる方々の多くがこのようなケージを使用しています。
4.大型水槽
ここでは幅60cmから120cmの熱帯魚用水槽で熱帯植物を容器内栽培をする方法を紹介します。水槽が大きくなると、単純の沢山植物を集めることが出来て、
見た目も華やかになるので熱帯植物のコレクションも一気に楽しくなってきます。
水槽の容量が大きいと水耕栽培などの成長速度を高速に出来るセッティングも、
安定して作れるので好きな人はやってみるもの面白いと思いです。
大型水槽での容器内栽培のメリット、
・沢山の植物を入れることが出来る。
・比較的大きな株や大きくなる種類を育成できる。
・温度管理がしやすい。
デメリットは、
・移動しにくい。
・病気が出た時に伝染してします。
・スペースがあるからと、植物を買いすぎる。
大型水槽を使った容器内栽培のセッティング方法
【写真4-1】
60cm水槽に熱帯植物をいっぱい詰め込んでいる様子です。
この水槽は水苔を下に敷いてその上に鉢を並べています。
ガラス板とサランラップで蓋をしています。
【写真4-2】
60cm水槽で容器内水耕栽培をしています。
猫除けマットで底上げして、エアーポンプでブクブクをして水が常に動いて酸欠にならないようにします。
この栽培方法はほとんどの植物で成長速度を劇的に早めるやり方です。
ただ、早い成長速度を維持する為には、定期的な水替えと肥料の追加をしなければいけません。
増殖や植物の成長に興味がある人にはかなり楽しいと思います。
増えすぎたり大きくなり過ぎたりするので、今はエアーポンプを止めて水位を下げています。
つまり普通の多湿環境の水槽です。
【写真4-3】
左側120cm、右側90cmの各ハイタイプとスリムタイプの水槽です。
90スリムタイプ以外は水苔を敷いてその上に鉢を並べてる方法で管理しています。
水槽が広いと沢山植物を集めることが出来るのでつい買いすぎたりしてしまいますね。
スペースに余裕があれば大きな親株サイズまで伸び伸び育てることも出来るので、
気に入った種類があれば作りこんでしっかり仕上げるのもよいかもです。
うちではスペースが足りず水槽同士が重なってます。
5.自作温室
置き場所が半端なスペースだったり、市販のものが物足りなかったりする場合は自分で作ってしまうのも選択肢の一つです。
モノづくりが得意な人なら予算次第では完成度の高いものが作れるでしょう。
ここでは自分の管理方法にあった使いやすいものを設計して作ってみました。
モノづくりも下手くそなので安い材料で、機能と耐久性のみに特化して、
見た目は気にしないことにしました。
自作温室での容器内栽培のメリット、
・とても使いやすい。
・比較的安く材料が揃う。
デメリットは、
・作る手間がかかる
【写真5-1】
型枠用のウレタン塗装されたコンパネと透明ポリカプラダン(ポリカ中空ボード)で作った温室です。
ウレタン塗装されたコンパネは水に強く劣化もしにくいので、これで箱を作ります。
【写真5-2】
つなぎ目の部分と切断面はシリコンで防水しておけば水漏れしないようになります。
【写真5-3】
天井部分と全面部分はポリカプラダンを使いました。
雑なつくりが逆に適度な隙間になって、環境設定がしやすい温室に完成しました。
6.プラスチック衣装ケース
長く熱帯植物の栽培をしていると、増殖した株が水槽に収まらなくなることがあります。そんな時は、この衣装ケースが非常に使い勝手が良いです。
値段も安く、サイズも色々販売されていて、重ねて置けるタイプのものも沢山あります。
衣装ケースでの容器内栽培のメリット、
・値段が安い
・重ね置きが出来る
・半透明なので適度に光量を維持できる。
・軽くて移動しやすい。
デメリットは、
・半透明なので中身が見えにくい。
・観賞用には適していない。
・劣化して壊れやすくなる。
【写真6-1】
衣装ケースは専用の蓋が付いているので、湿度維持も問題なくできます。
蓋は密封ではなく隙間があるので、工夫次第では高湿度を維持できる環境にしたり、
徐々に湿度を低下させていく環境を作ったりと色々な面で使いやすいです。
【写真6-2】
照明を設置すると、このまま熱帯植物を容器内栽培することも出来ます。
半透明なので中身は蓋を開けないと確認できませんが、
たまに開けて、綺麗に育っているとあなたは嬉しい気持ちになりニヤけてしまうでしょう。
水槽でのセッティングと同様に、底に水苔や軽石などを敷いて環境を整えたり、
猫除けマットで底上げをして水耕栽培の設備として使用することもできます。
7.プラスチックケース(プラケ)
うちでは、主に増殖用とワイルド株の初期養生に使っています。MAXサイズの小さい植物ならこのまま容器内栽培を続けることもできます。
水苔を入れてサランラップで蓋をしてしまえば長期間水やりをせずに放置できるのでとても便利です。
サイズは色々ありますが、頻繁に移動させるので20cmくらいまでの容器を使用しています。
【写真7-1】
このプラケはラビシアの葉挿し増殖中です。
増殖に時間がかかる種類は放置することになるので、
サランラップでしっかり密封して新芽が出るまで待ちます。
【写真7-2】
成長が早い種類のベゴニアなどの種類は、百均の蓋付き容器で管理しています。
定期的に手入れをしないとすぐに増えすぎるので、その点は蓋付きのものが便利です。
小さな容器内栽培は環境が安定しやすいので、調子があがると直ぐに植物が増えます。
【写真7-3】
蓋付きの容器は蓋だけだと湿度が逃げやすいので、
高湿度を維持したい時はサランラップを蓋の下にかぶせます。
上からプラスチックの蓋をかぶせるので、
サランラップは開けやすいように軽くかぶせるだけです。
8.蓋つきプラカップ
プラカップは葉挿し増殖をする為に開発されたものです。と言っても良いくらい使いやすい容器です。
種類ごとに少量の増殖や、希少な種類を小分けにしてリスク分散することにも使います。
容器は透明なので高さがあるものでは、重ね置きをしても光を取り入れやすく、
都合によって置き場所も移動できます。
【写真8-1】
これはソネリラをプラカップで葉挿し増殖している様子です。
透明で中身が確認しやすい容器なので、
増殖過程での植物の動きなどをこまめに観察できます。
気に入った種類を容器内栽培で芽吹き始めから観察できるのは非常に面白い体験です。
【写真8-2】
手入れもしやすく重ね置きもできるので、
色々な種類の熱帯植物で葉挿しに限らず、栄養増殖の動き方を見ることができます。
9.チャック付きポリ袋
【写真9-1】この方法は、体力はあるが根が無いホマロメナの発根促進の為に使っています。
この方法を体力が無い株でやると、中で蒸れて全体が腐ってしまいます。
失敗して根なし株を分けてしまった時や、
ワイルド株で根が切り落とされている状態で到着した時などは、
そのまま鉢植えにしても水を吸う力がないので萎れていってしまいます。
せっかく綺麗な現地葉が付いているのに、落としてしまうのは勿体ないです。
チャック付きポリ袋に水苔と一緒に入れておくと、
体の中の水分を維持でき全体からも水を吸収できるので、萎れることなく発根します。
【写真9-2】
植物は光が強いと発根が促進され、光が弱いと葉を含む地上部を大きくしようとします。
しかし、根が少ないまたは無い状態で光を強くすると蒸散によって水不足になり、
結果葉を落として体力を消耗して株自体が死んでしまうことがあります。
根の無い植物の体力を消耗させずに素早く発根させる為には、
水分と温かい温度と適度な光量が必要です。
ポリ袋で小分けにすることで、光量の確保をしながら他の条件も満たすこともでき、
単体で管理することで溶けの伝染も防止でき、リスク分散にもなります。